写真を撮るために農村をまわっていると、普段気がつかなくて、摩訶不思議ななものに出くわすことがあります。写真中央に苗代の畦に植えられているのは"水口(みなくち)の祭り"の"松苗"。田植え前には、田起し、畦作り、苗代作りなど一連の農作業を行わないといけませんが、その最後に畦に"水口"を作って、水の入り口を作ってそこから水を田や苗代に引き入れる作業があります。そのときに、苗を模した"松苗"を畦に刺して"水口の祭り"を行う風習が大和地方にはあります。大変素朴な農耕儀礼ですが、松苗は、それ以前に地元の神社で"おんだ祭り"や"野神祭り"などの祭りが行われて、そこで配られるが常です。農村地区を回っていると、毎年正確に同じ時期に行われる農耕作業にあわせて、すべてが計画的に行われていることがよく分かります。ですから、この水口の祭りも、田開き作業の最後をしめやかに祀るためのものであって、さりげないものだけれども、それなりに意味のあることが分かります。 |