虫送りという行事は、奈良だけなく、全国各地に残っています。虫送りは、害虫の災厄は悪霊のたたりであるとして、これを火で追い払う行事ですが、その悪霊を平安時代末期の武将斎藤実盛とする具体的な伝承がかなり広範囲に広がっていて、なかなか興味が尽きません。そういう地域では、実盛人形という藁人形を担いで練り歩いた後、その人形を火で焼いてしまうようです。ただ、奈良で何箇所かに残っている虫送りは、そのような伝承もなく、松明で悪霊を村境まで送っていくというだけのもので、下笠間の場合は、村境でお札を焼いて悪霊退散を祈るというところだけが他と異なります。ただ、夕暮れ時の鄙びた村の景色と相俟って、なかなか風情が在ります。あたりは、隠れた蛍の名所でもあって、村送りの後、蛍を楽しむことも出来ます。(下笠間/虫送り-全写真) |